平成27年度

通信情報システム専攻 守倉正博教授(通信システム工学講座 伝送メディア分野)が2015年5月に紫綬褒章を受賞されました

守倉 正博(もりくら まさひろ)

通信情報システム専攻 教授

平成27年5月 春の紫綬褒章受賞

— この度の紫綬褒章受賞おめでとうございます.この賞の概要について教えて下さい. 

紫綬褒章は,科学技術分野における発明・発見や,学術及びスポーツ・芸術分野における優れた業績等に対して表彰されます.例年,春と秋の2回発令され,今回は春の褒章として頂きました.大学教授以外に一般の方も良くご存じの歌手や作家,芸術家の方も受賞されるので,マスメディアでも取り上げられることが多い賞です.今回は,歌手の谷村新司さんや作家の浅田次郎さんなどと一緒に17名がこの賞を頂きました. 紫綬褒章の伝達式は,5月15日の午前に東京都内の如水会館で行われ,午後から皇居で天皇陛下に拝謁しました.伝達式では,山中伸一文部科学省事務次官より,紫色の綬(リボン)が付されたメダルと,天皇名の褒状(賞状)を頂きました.

 

— 本賞において顕彰された先生の業績およびその意義について,分かりやすく簡明にご説明下さい. 

私の受賞理由は,「無線LANの国際標準化に貢献したパケットモードOFDM方式の開発」です.無線LANが現在のように普及する前の1990年代においては,無線LANの伝送速度が2Mbit/sに留まっており,高速伝送を実現するためマルチパス干渉に強く周波数利用効率の高い無線通信方式が求められていました.本研究では,マルチパス干渉に強く周波数利用効率が高いがパケット伝送への適用が困難であったOFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing) 技術を無線LANパケット伝送に適用するため、OFDMパケット信号の送信間隔を短縮する技術,OFDMパケット信号の到来タイミングを高速かつ高精度に周波数同期を行う技術,送受間の周波数ずれに起因するサブキャリア信号の位相回転を高精度に補正する技術,マルチパス伝播による波形歪を高精度に等化する技術等を考案,確立したものです.本研究により,高速伝送に適したOFDM技術を無線パケット伝送に適用することが可能となり,無線LANの国際標準規格であるIEEE802.11a,IEEE802.11g等に採用され,ブロードバンド無線LANの普及に貢献しました.現在実用化されている無線LANはパケットモードOFDM伝送技術を拡張したものであり,現在でも多くのスマートフォンやタブレット端末に実装されています. 

 

— 今後の先生のご研究の発展,またその将来像について教えて下さい. 

無線LAN技術は今後とも更なる高速伝送を実現するためにマイクロ波帯からミリ波帯やテラヘルツ帯へと挑戦を続けて行く必要があります.無線周波数が高くなればなるほど,光の領域に近くなり伝送可能な距離の確保が困難になります.高速伝送以外に,あらゆる物に通信機能を持たせたIoT (Internet of Things) 時代の到来に向けた無線センサーネットワークの研究も重要になって来ます.これらの分野で研究を遂行し,人材育成をして行こうと思っています.

 

— どうも有難うございました.今後のご研究のますますのご発展をお祈りします.

守倉教授 伝達式会場にて