講演要旨

Join & Shareで創る"情報による自助・共助減災学"

中神 武志(株式会社ウェザーニューズ)

東日本大震災による地震・大津波災害をはじめ、近年の異常気象による被害は私達の日常生活に大きな影響をもたらしています。これを如何に減らすことが出来るかは、「減災」への取り組みを如何に普段の生活に浸透させるかがポイントとなっています。
ウェザーニューズでは、個人や地域のコミュニティーでの減災意識を高め、気象災害による被害を少しでも軽減するため、住民の自助・共助活動を支援する“減災プロジェクト”に自治体とともに開始しています。平常時に楽しみながら参加し、いざという時には被害の情報や対応策を共有していくという取り組みです。
この他、ウェザーニューズの東日本大震災に対する様々な取り組み事例もご紹介します。

東日本大震災の災害報道を振り返る~社会的なリアリティの構築をめぐって~

近藤 誠司(NHK大阪放送局(報道部))

大・広域・複雑・多様な被害を及ぼした東日本大震災では、発災当初から、多くのメディアが、人々の命を守るための「災害報道」に尽力し続けてきた。しかし、そうした取り組みの中には、「はからずも」、社会的に見れば逆機能の効果(マイナスの作用)を出したと見られるものがあったことも、また事実である。これらを丹念に読み解き、整理・検証し、次に生かすためのアプローチのひとつが、「社会的なリアリティ」という新たな視座の導入である。
津波襲来までの限られたリードタイムの中で、メディアや関係当事者たちは、どのような「危機感」を醸成することができたのか。発災からの数週間、被災者が衰弱していく急性期において、ボランタリーな支援の必要性に関して、どこまでその「緊急性」を察知しあうことができたのか。日々、変動していく被災地の苦境に関して、どこまでありのままの「多様さ」を共有することができたのか。
人々の間で共同的に構築される「社会的なリアリティ」を機軸に「災害報道」のありようを捉え返すことで、従来の「状報・移転」型のカラを破り、より効果的に防災・減災に資する「情報・共助」型の「災害報道」を可能ならしめる道筋が開けてくるのではないか。本報告は、その第一歩を探索するための、ささやかな試論である。

Google Crisis Response

賀沢 秀人(グーグル株式会社)

Google では2011年3月11日の震災発生直後から、被災地での救援および復興活動を支援するための取り組みCrisis Responseを続けている。本講演ではエンジニアとして初期段階からCrisis Responseに参加してきた経験をもとに、実際の開発現場で何が起きていたのか、そして非常時におけるソフトウェア開発について何を学んだのかについて紹介する。さらに次の震災に備えてソフトウェア業界ができることについて幾つか提言を行う。

東日本大震災におけるITSの取り組み~通行実績・道路規制情報~

八木 浩一(特定非営利活動法人 ITS Japan)

2004年の新潟県中越地震や2007年の新潟県中越沖地震など過去の震災時には,国土交通省が通行止め情報を配信するだけでなく,本田技研工業株式会社と研究機関が協力し通行実績情報を提供するなど,被災地支援に重要となる円滑な移動の確保に向けた取り組みが行われてきた.さらに大きな支援効果を生み出すにはこれらの連携が重要であり,これを実現するためには,目的・手段の明確化と,それに適したデータフォーマットの取り決め,さらには運用手順とルールの取り決めなどが求められる.東日本大震災ならびに平成23年台風第12号において,民民,官民が連携して「通行実績・道路規制情報」を初めて共同で作成し配信した.経緯と背景,実施内容と効果について具体的な事例を挙げながら紹介する.