大竹伸一氏 祝辞



情報学研究科10周年おめでとうございます。
また情報学研究科の創設にあたってご尽力された長尾元総長の文化功労賞受賞、誠におめでとうございます。

企業サイドから社会をみますと
 安いところで仕入れて高いところで売る → 商業資本主義
 労働生産性(端的には賃金差)が優位  → 産業資本主義
 株などの金融が産業を支配       → 金融資本主義
「ウオール街の終焉」とともに米国の「金融立国」戦略も行詰まり、同時に 金融資本主義も見直しが迫られている。
原点に返った 安いところで仕入れて高いところで売る「商業資本主義」や 労働生産性が優位に立つ「産業資本主義」は、いずれも競争によって(マネをされ)差は消滅。さらにネットワークの進展で一層顕著。

これからの産業界は「コンバージェンス(融合)」がキーワード もう少し言い換えると 「コンバージェンス(融合)」は“単独による独創よりも多数による共同的創造が、より高次元の創造を生む”「共創」と言い換えてもよい。
社会のニーズを汲み取り、他社よりも先に知識を得て新製品・新サービスを 出すことが必要。
 企業は現在のお客や株主に責任がある → 技術開発は改良型
 大学は未来から現在を見ることができる → 大学の意味が大きくなる。
さらにキーワードである「コンバージェンス」はまさに企業にとっても裾野の広い学際領域の研究が不可欠であり、この観点からみても「情報学研究科」を10年も前に創設した先見の明に敬意を表したい。

今後の大学教育については、専門分野ありきではなく、実世界の課題志向も必要であり、情報の本質・価値を産み出す本質をつかむ「情報学研究科」であって欲しいし、「想像」を「創造」に変える力を発揮して欲しいと願っています。